とん太も日を追って大きくなり、それなりに気が合う仲間、意に添わぬ仲間が出来てくる。とん太は比較的いがみあわぬ犬だが、相手によっては根が勇猛な気性だから、自分より数倍大きい相手でも、激しく吠え立てることがある。
 最近の気が合うお相手は「花ちゃん」という雌犬で、2匹が転げまわってはしゃぐ姿は誠に微笑ましいが、最近とん太はこの「花ちゃん」にいかがわしい姿勢をみせるようになり、「花ちゃん」の飼い主は「もしも」を心配するようになってきた。

 まだ7ヶ月だからと心配はしないが、獣医さんに聞いてみると、去勢するのなら8ヶ月がいいという。小生とすれば男性の立場から、双手を挙げて賛成し兼ねるところで、若くして男性を失う気持ちになかなかなれないところである。
 唯一の救いは、性格がおとなしくなるかもしれないということで、腕白なガキ大将が静かな坊やになってくれれば、散歩も楽になるかもしれないということである。

 そんな訳で、8ヵ月後の3月中旬を過ぎた某日手術した。たしかに医者が言うように、手術は簡単で、一泊してとん太は戻ってきた。一週間後に抜糸したが、その時は綺麗に傷も癒えていた。「さあ、これでとん太はニューハーフに変身するか?」とその変化を期待したが、見たところあまり変わってこない。そのうちなんとかなるだろうと、歌の文句に任せていたが、おとなしいどころかだんだん勇ましくなってくる。これでいいのかなと思っているうちに、どうも以前より乱暴になってきたんじゃないかと思うことが、しばしば起きるように感じられてきた。折に触れてお医者さんに聞いてみると、「去勢しておとなしくなるとは限りません。むしろ精神的には悩みが無くなって、元気になることがあります。とん太はまだ未成年ですから、若い力がセックス以外の行動に現れるかもしれません」。なるほど、言われて見れば彼は童貞で男としての資格を失ったのだから、本来男性としてのエネルギーが一見乱暴と見える態度にでるのかもしれない。

 そうしたせいでもあるまいが、10ヶ月を過ぎるとなんだかづうづうしくなって来たみたいで、これまでいくらか遠慮もみえていたが、最近は「俺も一家の一員だ」とかなり威張ってきた。これは「しつけ」のせいだけでなく、かれの気持ちの上で、あれだけのことをしたのだからという、「一体感」が生まれてきたのではないだろうか。


 ともあれ、もはや子犬とはいえぬ性格が構成されつつあり、この「とん太物語」も今後長い周期の記録として、ご披露していきたいと考えている。