| 今から25年近く前、私は漢方薬局に勤めていましたが、 思い立って(これは急にではなく、中学生のころからの希望でした。) インドに行くことを決めました。 私にとっては初めての海外で、勤めを辞めてもいいという覚悟で 薬局の社長に申し出ましたら、快く承諾してくださり、3週間の 休みをいただけることになりました。 一応ツアーのメンバーとして行ったのですが、そのメンバーが すごいかたたちばかりで、南極まで行ったというかた、世界中 回って最後にインドというかたなど、海外旅行のベテランばかりで 初めてなのは私一人で、最年少でした。 インドに到着し、宿泊先のホテルはクーラーが付いていましたが、 移動のバスにはクーラーがなく、10月という一年中で一番気候の 安定した時期にもかかわらず、日中の暑さは日本の比ではありま せんでした。 ツアーを続けるうち、過酷な環境のなかで、私たちの食べるカレー とはほど遠い質素な食事で、自然にさかわらずに生きている、 貧しいインドの人々に接して、私は大きなショックを受けました。 ものごいをする子供たち、やせほそった人々、下調べをしていった にもかかわらず、現実を目の当たりにして、私はなすすべもなく、 立ちつくすばかりでした。 タージマハールなど、神秘の国というあこがれを持っていた私でし たが、一部の上流階級の私利私欲のために犠牲になった人々の、 数の膨大さばかりが頭に残り、インドの伝統医学や興味のあった 香辛料に関して、何も触れることができなかった自分をどうするこ ともできなくて、帰国後しばらくは、虚脱状態でした。 その後遺症からか、観光旅行そのものができない状態をひきずって いましたが、最近、人々が不平不満を考える余裕すらなかった環境の なかで、しっかりと根付いていったインドの伝統医学を調べなおして みたいという意欲が出てきました。その過程の中で、あのやせ細った 人々の心の中を少しでも理解することができたら、と考えています。 |