腸管免疫のしくみ(2)

私たちの体には、病気になったときにそれを治す自然治癒力が備わってい
ます。自然治癒力は、中枢神経系、内分泌系、免疫系、自律神経系などが
お互いに密接な連携体制で支えられているのです。
また、私たちの体は、皮膚と粘膜により外界から隔てられていて、この皮膚
や粘膜には、100兆を常在微生物が棲んでいます。これらの常在微生物は
粘膜を介して免疫系、内分泌系、自律神経系と相互に影響を及ぼしあって
います。すなわち、私たちはこれらの常在微生物と共生しているのです。

免疫系は、ゾウリムシなどの原生生物が、自分と敵(異物)を見分けることか
らスタートし、私たちの体に備わっている免疫システムに進化しました。
しかし、進化した免疫システムでも基本は変わらず、大きく分けて4つの敵
(異物)を見つけ、排除していくものです。

1番目の敵は、花粉のような微細は異物です。2番目の敵は、細菌やウィル
スのような感染性の異物です。3番目の敵は体の中にできるガン細胞です。
4番目の敵が、体の中にできた老化細胞や老化物質です。
そのような敵に対して、免疫系は4つのパターンで対して行きます。1番目の
敵に反応したのが、花粉症などのアレルギーです。2番目の敵に負けると、
肺炎などの感染症が起こります。3番目の敵を見逃して大きくしてしまうと、
ガンが発病します。4番目については、自分の体が敵と勘違いして攻撃した
場合が、膠原病などの自己免疫疾患です。あるいは、老化物質を処理でき
ずに起きる老化現象です。

腸管と免疫系

免疫系は大きく分けて、1次免疫系と2次免疫系に分かれます。
1次免疫系の器官は骨髄と胸腺です。すべての血球(赤血球、白血球、血
小板)は、骨髄で作られます。
2次免疫系の器官は、脾臓、肝臓、体のあちこちにあるリンパ組織、それと
骨髄(骨髄は1次、2次の両方に属します)です。
リンパ組織は、免疫システムの最前線で、異物が侵入しやすい場所に集ま
っています。
実は、体の中で最も異物が侵入しやすい場所は、食物を吸収する小腸なの
です。小腸の粘膜を広げると、皮膚の200倍もの面積があり、体中のリン
パ組織の6〜7割が小腸に集まっているといわれます。
小腸のリンパ組織では、抗体(抗原の侵入に反応して作られ、抗原に対す
る免疫性を発揮する物質)が作られたり、リンパ球が活性化されたりします。
その活性化されたリンパ球は腸内だけにとどまらず、全身のリンパ球を活
性化し、その一部は腸管リンパ組織に戻ってくるのです。

1次免疫センターである胸腺は、Tリンパ球という士官を育て上げると、そ
の役目は終わります。16歳ごろに胸腺は大きさも働きもピークを迎え、以
後は徐々に小さくなって、40歳ごろには四分の一くらいになります。ちょ
うどこのころが、ガン年齢に当たるわけです。
そして、80歳ぐらいになると、胸腺は痕跡程度となり、免疫系からいうと寿
命を迎えるわけですが、実際は免疫センターがシフトすることで生涯にわ
たって働き続けます。そのシフト先が腸管リンパ組織です。したがって、成
人後に免疫力は、腸管リンパ組織にかかっているのです。

動物の最初の祖先は、ヒドラなどの腔腸動物です。ヒドラはイソギンチャク
に似て、触手の中心に口があり、腸につながっています。肛門はなく、排泄
は口から行われます。
腸の粘膜に当たるのが内胚葉で、皮膚に当たるのが外胚葉です。内胚葉と
外胚葉の間に、ニューロン(神経細胞)のネットワークがあり、マクロファー
ジという元祖の免疫細胞がいます。このニューロンが首に集まって大きくな
ったのが、のちに脳になります。
また、マクロファージも進化してリンパ球と顆粒球になり、免疫系が形成さ
れます。
一方、ヒドラの内胚葉を拡大してみると、粘膜細胞の間にパラニューロンと
いうホルモンを含んだ細胞があります。それは、内分泌系、副腎髄質細胞、
網膜の細胞などに進化していきました。
ヒドラの腸も、その5億年後に発生した哺乳類の腸も、基本的には同じと考
えられます。つまり、神経系、内分泌系、免疫系は腸から始まり、私たちの
腸もそれらを備えた多機能臓器であり、自然治癒力の要と言えるのです。
                       (参考:安心第22巻3号)

腸管免疫のしくみ(1)」「低下した腸管免疫力を改善する食生活」などの
ページも参考になさってください。 

1月の「ひとこと」

「こらむ」と「ひとこと」項目別