更年期障害のホルモン補充療法

 閉経前後(更年期)の女性では卵巣が萎縮し、エストロゲン(卵胞ホルモン)
の分泌が低下することが原因で、様々な不快な症状が出現します。このうち
日常生活に支障を来たすほど重要なものを「更年期障害」と呼びます。

更年期障害の治療では、不足したエストロゲンを補充するホルモン補充療法
(HRT)が行われますが、現在ではエストロゲン製剤に少量の黄体ホルモン製
剤を併用する「併用療法」が一般的です。これは子宮内膜ガンの発生を抑え
るためであり、併用療法ではホルモン補充療法をしない場合よりも子宮内膜
ガンの発生が抑えられています。
HRTは、特にのぼせ、発汗、冷えといった血管運動神経症状に有効で、短期
間で症状がほぼ消失することも多く、患者さんの満足度も高いと報告されてい
ます。

しかし最近、ホルモン補充療法の安全性に対して否定的な報告が続いていま
す。一つは、2002年7月、米国国立心肺血管研究所のHRTに関する大規模試
験が、試験期間途中で急遽中止されたことです。この試験では、閉経後女性
約1万7000人を対象に、8.5年間HRTの冠動脈疾患の予防効果を調べる予定
でしたが、5.2年経過した時点で、HRT群では冠動脈疾患や乳ガンが有意に増
加していました。具体的には、乳ガンでは1万人に対する年間発症者数が対
象群で30人だったのに対し、HRT群では38人でした。
一方、昨年8月に発表された英国の大規模疫学調査では、エストロゲン・黄
体ホルモン併用療法群では、対照群に比べて乳ガンを2倍発症しやすく、治
療期間が長いほどそのリスクが高いと報告されました。ただし、この研究は
無作為化比較試験ではなく、乳ガン検診の受診者約108万人の観察研究な
ので、正確なデータとはいえないかもしれません。

こうした海外での研究報告を受けて、厚生労働省は昨年11月、メーカーに
添付文書の改訂を指示しました。具体的には、心筋梗塞や脳梗塞などの既
往者が投与禁忌となったほか、重要な基本的注意事項として、投与開始後だ
けでなく投与前にも乳ガン検診や婦人科検診を行うこと、漫然と長期投与を
行わないことなどが追記されました。

日本更年期医学会は、「更年期症状を適応とする短期のHRTについて今回
の報告では言及されていない」「更年期症状に対するHRTの効果は明らかで
ある」との見解を発表しています。  (参考:NIKKEI Drug Information)

このHP内の「更年期障害・血の道症の漢方処方」や「日本更年期学会」の
HPなども参考になさってください。

1月の「ひとこと」

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