| 胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、病態的に異なった点が多いのですが、 漢方では両者を同一のものとして、漢方的適応症に従って処方を 決めます。 この病気は、現代医学でも手術をせずに治す方法が確立しつつ ありますが、もともと漢方が比較的効果の出る分野に属し、手術 が必要と診断された患者さんが、治癒に至った例も少なくありま せん。ただ、ことに胃潰瘍については、胃ガンとのかかわりも無 視できませんので、ガン化の危険のないこと確認することが大事 です。 現代医学の療法では、胃酸の分泌異常など、胃・十二指腸粘膜 に対する攻撃因子の増強によっておこる潰瘍と、粘膜の防御力 の低下によって起こる潰瘍とで、方針が全く違いますが、漢方で はこの点についても、特に区別はありません。 まれに無痛性の潰瘍もありますが、多くの場合、胃・十二指腸潰 瘍では胃部にさまざまな痛みを訴えるのが普通です。この痛みを 主目標に用いる漢方薬が、小建中湯、安中散です。 下血し、それによって貧血の傾向が見られる場合には、十全大 補湯、四君子湯などが適応となります。 また、出血がひどいときには、適応症によって選んだ処方に、さ らに止血剤として三黄瀉心湯などを合方または兼用で用いたりし ます。しかし、あまり吐血がひどいようであれば、やはり応急の処 置を講じることが必要になります。 【実証に使われる処方】 三黄瀉心湯:サンオウシャシントウ 体力が中等度以上で、のぼせやすい、みぞおちのあたりが つかえるというような気がする、便秘、不眠の傾向、出血が あるような場合 桃核承気湯:トウカクジョウキトウ 身体ががっしりとしていて、赤ら顔であぶらぎった感じがす ることがあり、便秘、肩こり、のぼせ、しばしば上腹部に激 痛があり、腹力が充実していて、へその斜め下に強い圧 痛が認められる場合 【中間証に使われる処方】 柴胡桂枝湯:サイコケイシトウ 腹力は中程度、右にやや弱い重苦しさがあり、みぞおちに 弱い抵抗、圧痛がある、左右の腹直筋が少し張っていて、 すこしのぼせやすく、上半身に汗をかきやすい場合 半夏瀉心湯:ハンゲシャシントウ 体力が中等度で、みぞおちが張ったり、つかえたり、腹が ゴロゴロ鳴ったり、食欲不振、下痢しやすい、ときには吐き 気がある場合 【虚証に使われる処方】 安中散:アンチュウサン 体力がなく、胃のあたりが痛んだり、つかえたり、胸やけが したり、食欲不振、疲れやすいような場合 小建中湯:ショウケンチュウトウ 顔色がすぐれない、みぞおちが痛む、動悸がしやすい、食 欲不振、腹部に力がなく、左右の腹直筋が張っている場合 「胃の自覚症状と市販薬」「市販胃腸薬の注意点」 「胃・十二指腸潰瘍(発生機序と症状)」なども参考になさってくだ さい。 |