| 動物から人間にうつる感染症が人畜共通感染症です。WHO(世界保健機関) は、病原体160種をあげています。そのうち、主に猫にひっかかれた傷から うつる感染症で、新興感染症として注目されているのが猫ひっかき病です。 猫ひっかき病は子供に多いのが特徴です。一般に良性疾患で、感染しても自 然に治るのですが、免疫不全などの疾患がある人や免疫抑制剤を使ってい る人では重症化の傾向があります。合併症でもっとも重症などは脳炎です。 【症状】 猫ひっかき病の典型的な症状は、受傷後3〜10日目に傷口(菌の侵入部) に虫刺されに似た病変が出てきます。少し盛り上がった3〜5ミリの発赤で、 やがて水疱になります。化膿や潰瘍に進むものもあります。 これら初期の病変から1〜2週間後、患者の半数以上に傷口の近くのリンパ 節が卵大に腫れてきます。多くは脇の下、足の付け根、首などです。痛みが あり、数週間から数ヶ月は続きます。多くの患者で発熱、悪寒、だるさ、食欲 不振、頭痛などの全身感染症の兆候がみられます。 猫にひっかかれたあと、発熱があり、傷口も発赤しリンパ節も腫れてきたら、 すぐに受診することが大切です。 【ネコノミ媒介】 猫ひっかき病を世界で初めて報告したのはフランスの研究者で、1950年でし た。以降、原因としてさまざまな病原体が浮上しては消え、長い間、正体不明 でした。 1990年代になって、エイズ患者に細菌性血管腫(皮膚の血管が異常増殖し、 袋状に盛り上がる)が多発することや、この病気と猫の関係が指摘されるよ うになりました。また、1992年には米国で細菌性血管腫症の患者や猫の血液 中から新種の細菌バルトネラ・ヘンセレが見つかりました。 さらに、猫ひっかき病患者のリンパ節からもこの菌が見つかり、多くの患者が この菌に感染したことを示す抗体を持っていたことから、バルトネラ・ヘンセ レが猫ひっかき病の原因菌であると確定しました。 1995年、バルトネラ・ヘンセレは日本の猫の血液中から初めて見つかりまし た。さらなる研究からは、1〜3歳の若い猫の保菌率が高いことがわかりまし た。原因菌は猫の血液中、口の中、つめに存在します。保菌率などから猫の 10〜15%程度が潜在的な感染源になっていると考えられています。 猫ひっかき病の発生率は、ネコノミの分布、飼育されている猫の密度に関係 していると考えられています。ネコノミの腸内・糞便中から原因菌が見つかっ ているので、ネコノミを介して猫から猫へと伝わることが確認されています。 事実、猫ひっかき病は、ネコノミが多く寄生した子猫を飼っている人に多発し ています。感染猫の血液を吸ったネコノミが人間を刺して感染させる可能性 が考えられます。 【予防】 猫から感染する人畜共通感染症は、猫ひっかき病のほか、パスツレラ症、ト キソプラズマ症などがあります。 最近、猫はコンパニオンアニマルとして家族同様に扱われ、濃密に接触する 機会も多くなっています。 猫と楽しく、快適に生活しながら、猫ひっかき病を含め人畜共通感染症を防 ぐためには過度な接触を避ける、ある程度の距離を置くことが必要になりま す。 猫に触ったら手を洗う、飼い主の顔をなめさせない、口移しでえさを与えない、 一緒に寝ない、ひっかかれたら小さな傷でもよく消毒することなどが大切です。 猫の衛生状態に気をつけ、特にネコノミを定期的に駆除し、つめを切ってお くことにも注意が必要です。 (参考:くらしの百科3112) 「人畜共通感染症」「代表的な人畜共通感染症」なども参考になさって下さい。 |