鏡に対する赤ちゃんの反応

鏡に写る自分の映像に対して、子供たちが示す反応の年齢的変
化については、発達心理学者のアーノルド・ゲゼルの解説、ディ
クソンやわが国の百合本仁子氏の研究などがあります。

ディクソンによると、生後16週ごろの赤ちゃんは、鏡の前に連れ
ていっても自分の姿には無関心で、自分のそばに映っている母
親の映像に対してだけ、ほほえみや喃語(なんご)などの積極的
反応を示すといい、この段階を「母親認知の段階」と名づけてい
ます。これに続く16〜24週は「遊び友達の段階」で、自分の映
像に対して積極的な反応を示すようになりますが、その反応は
ほかの同じ年頃の子供の前にいる場合とほとんど同じです。

次の24〜28週は「自分と同じことをするのは誰だろう」の段階
です。自分の身体と、鏡に映っている映像とを交互に眺めたり、
口を開けたり閉じたり、立ったりしゃがんだり、実際の行動と鏡
の映像との関係を吟味するようになります。次の48〜64週は
「はにかみの段階」で、鏡の前に連れてこられると、はにかんで
鏡を避けたり、鏡に映っている自分と視線が合うことを避けたり
します。

以上は鏡の映像に対する反応態度を4段階に分類したディクソ
ンの意見ですが、ゲゼルはこのような類型化は行わず、ありの
ままの事実だけを述べています。
ゲゼルによると、生後満16週の乳児は鏡の映像に対してほほ
えむこともあるが、ほとんどはただ注目するだけであるといって
います。20週になると、大人が鏡をたたいて注意を向けさせる
と、たいていは映像に向かって微笑むようになりますが、ときに
は反対に泣き出す場合もあるといいます。そして、24週ごろに
なると鏡の映像を見てほほえんだり、話しかけたりするようにな
ります。さらに、生後28週ごろになると、確実に自分の顔の映
像を注視し、鏡に手を触れたり、たたいたいりするようになると
いうことです。

以上の二人の研究者の観察結果から、乳児は生後4ヶ月ごろ
から鏡に映っている自分の姿に関心を持つようになりますが、最
初の間は映像と実在する人物との区別もできませんし、映像と
自分との関係も理解できないようです。

わが国の百合本仁子氏は、生後60週と88週の子供を観察し
ておられますが、映像と実在する人物とが異なるものであるこ
とが理解され、また、映像が自分の姿であることを理解した上
で二次的に相手を見立て、積み木を渡すまねをするなどの行
動を示すのは、生後1年6ヶ月以降のことであったということで
す。
                 (参考:薬壺 2001,)

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