アトピー性皮膚炎にともなう
             カポジ水痘様発疹

単純ヘルペスウィルスは身体のいろいろなところから分離され、様
々な感染症を起こしますが、皮膚科領域で最近、注目されている
のが増加傾向にあるアトピー性皮膚炎に合併するカポジ水痘様発
疹症です。これはアトピー性皮膚炎治療薬として開発されたプロト
ピック軟膏(免疫抑制外用剤)によりさらに増加することが予測さ
れるからです。

【単純ヘルペスウィルスのメカニズム】

単純ヘルペスウィルス(HSV)は身体のいろいろなところから分離
されます。AJ.Namiasという研究者によると、HSVには1型と2型が
あり、唇や上半身、下半身の皮膚、性器だけでなく眼や脳などか
らも分離されていると報告されています。

また、HSV1型は上半身に、HVS2型は下半身に分布しているこ
とがわかっていますが、この理由はまだよくは解明されていません。
HSVが潜伏感染している全身の神経節には1型と2型は同じよう
に潜伏感染していることが認められていることから、おそらく再活
性化するときに、上半身では1型が、下半身では2型が再活性化
するようなメカニズムができあがっているのではないかと考えられ
ています。

【アトピー性皮膚炎に合併するカポジ水痘様発疹症】

皮膚疾患は患者さんに精神的な苦痛を強いることが少なくありま
せん。アトピー性皮膚炎もその一つですが、アトピー性皮膚炎の
診療上、しばしば問題になることの一つに細菌やウィルス感染症
の合併と、その重症化があげられます。

アトピー性皮膚炎があってHSV感染が起こると、その臨床症状
は重症化しカポジ水痘様発疹症を発症することが多いといわれ
ています。この原因ウィルスのほとんどはHSV1型で、その臨床
症状は発熱、倦怠感などの全身症状を伴って顔面、頚部を中心
に小水疱が多発、拡大していきます。

兵庫県皮膚科医会のデータによると、カポジ水痘様発疹症は増
加傾向にあり、年齢分布をみると、20歳代にピークが認められ
ます。その理由としては、成人のアトピー性皮膚炎患者の増加と
HSVに対する抗体保有率が低下していることが考えられます。

また、アトピー性皮膚炎患者に細菌やウィルス感染が起こりやす
く、重症化しやすい背景には表皮の細菌、ウィルスに対するバリ
ア機能の低下が関係していると考えられています。

アトピー性皮膚炎の炎症症状とくに顔面の炎症症状を改善する目
的で、免疫抑制薬の外用剤プロトピック軟膏が開発され臨床的に
も効果を上げていますが、長期にわたってこの薬剤を使ったとき
には皮膚局所の免疫抑制にともなうカポジ水痘様発疹症の出現
が懸念されています。

【治療】

アトピー性皮膚炎にカポジ水痘様発疹症が合併したときには、抗
ウィルス薬の内服でHSVの増殖を抑える治療が中心になります。
このときのアトピー性皮膚炎の治療はステロイドの外用は控え、
非ステロイドの消炎鎮痛剤(外用)を用いて対処します。
最近は、カポジ水痘様発疹症の重症例が少なくなりましたが、ア
トピー性皮膚炎の悪化と思って抗ウィルス薬の使用時期が遅れ
るケースがないとはいえません。たとえばステロイド外用剤を使っ
ているにもかかわらず症状が悪化するような場合には、カポジ水
痘様発疹症を疑う1つの根拠となるので、皮膚科医の専門的な
診断を仰ぐことが大切です。

【再発予防その他の注意】

皮膚についた汚れや汗を洗い落とすためには入浴が大切で、入
浴により皮膚の細菌群の80%が減少するといわれています。
できたら1日2回くらい入浴しましょう。
ただし、お湯が熱すぎたりシャワーの水圧が高すぎたりすると皮膚
刺激となることがあります。一般に汚れを落とすには石鹸でよく洗
うのが良いとされていますが、石鹸には多種の添加物が含まれて
いる場合も多く、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因になることも
あります。使う場合には、できるだけ刺激の少ないものを少量使い
タオル垢すりなどで皮膚をこすらないようにしましょう。

またシャンプーには大量の界面活性剤、起泡剤、香料、色素など
が含まれており、強い皮膚刺激作用があります。ベビーシャンプー
や植物性シャンプーなども例外ではありません。できるだけ化学
物質の少ないシャンプーを選び、すすぎを十分することが大切で
す。

入浴後は乾燥するので、体質に合った保湿剤を塗布し、炎症部
には適切な抗炎症剤を塗布します。
また肌着は吸湿性のある木綿を用い、洗濯の際にも十分すすい
で洗剤がのこらないようにすることが大切です。
                  (参考:NIKKEI Drug Infomation)

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