| 文芸春秋9月号に『“買ってはいけない”はインチキ本だ』という 見出しがありましたので購入して読んでみました。書いているの は日垣隆氏(作家)です。 日垣氏は“買ってはいけない”は全体に次のようなことが言える と書いています。 ………………… @独自の検証もせず、都合のよい文献からの恣意的な引用だ けを自説の根拠にした。 A実被害を受けたわけでもなく、また直接被害者に取材したわ けでもないのに、特定商品を全否定してしまった。 B無関係な二つのことを強引に結びつけて、それを説得力と勘 違いした。 C平気で事実をねじまげた。 Dどうしてそのような商品が求められたのか、を視野に入れよ うとせず、安全や健康という基準のみによってメーカーへの 敵意を煽った。 Eどんな商品ならいいのかを提示せず、読者に不安とストレス を与えるだけに終始してしまった。 F専門的記述をちりばめ、いっけん科学的に装いをこらしたも のの、意図的としか思えぬ誇張や誤謬が多い。 G類似品のなかでなぜそれだけをターゲットにしたかといえば、 他より広告が目立つという以外に理由はなかった。 ………………… と書いています。 日垣氏は例を上げて「誇張や誤謬」という部分を指摘していま すが、そのなかで食品添加物の「ソルビン酸カリウム」につい てのものを書いてみましょう。 ………………… ヤマザキクリームパンに対してだけでなく、ファミリーマートの手 づくり新鮮サンドイッチや岩下の新生姜といった批判ページで も、胃や腸にも悪い影響を与えると断じられたソルビン酸カリウ ムだが、著者らが都合の良いときしばしば引用する『食品添加 物公定書解説書』(廣川書店 5万5千円)でも、毒性はないと の3つの検査結果が示されている。だが“買ってはいけない”は 強引にこう続ける。 《ソルビン酸カリウムと性質や毒性がほぼ同じ保存料のソルビ ン酸を、落花生油あるいは水に溶かして、ラットに皮下投与した ところ、ガンが発生したとの報告がある》 これも実に詐欺的な文章である。ソルビン酸カリウムとソルビ ン酸は似て非なるものであるばかりか、執筆者は、同じ実験で ソルビン酸カリウムをラットに皮下投与しても、ガンが発生しな かったことを知りながら、あたかもヤマザキクリームパンに使わ れているソルビン酸カリウムが、発ガン物質であると言い募っ て大芝居をうったのだ。良心の痛みを感じなかったのだろうか。 一冊6万円近い本など素人読者は見ないとタカをくくったのか。 彼らが参照し、前半だけを恣意的に紹介した実験の引用箇所 には、実はこう書かれていたのだ。 《ソルビン酸を落花生油もしくは水溶液で同じ部位に繰り返し 皮下投与するとラットに局部的な肉腫を生じたが、同じ方法で ソルビン酸カリウムを投与しても腫瘍は生じなかった。》と。 ………………… 以上は1例ですが、私はどちらも否定はしないつもりです。 思ったよりも多くの添加物や身体に害のある物質が多くのもの に含まれているのを知らせてくれたのが“買ってはいけない”で すし、それによって商品を選択する場合の目が変わったように 感じています。作為的に不安を募らせ、ベストセラーを狙ったと 思われる懸念はありますが、氾濫しているなかから商品を選ぶ 選択眼を鍛えるために一読の価値はあると思います。そして、 “買ってはいけない”をお読みになった方には、ぜひこの文芸 春秋9月号を合わせてお読みいただきたいと思います。 マスコミや書物に踊らせられないように、私たちが選択眼を鍛 えなければならないと感じた次第です。 |