| 感染症の治療に画期的な進歩をもたらしたペニシリンは、フレミングに よって1928年に発見されました。第二次世界大戦中の40年代になって、 英国と米国との協力で、それは大量生産されるようになりました。 わが国では、ペニシリンは44年に研究が開始され、終戦直後に製造が 始まりました。その後、米国の技術協力を得て、品質、製造法などが急 速に進歩しました。 抗生物質開発のもう一つの系統は、ワックスマンによるストレプトマイシ ンの発見(44年)に始まります。わが国では、49年にストレプトマイシン の輸入、50年に国産化が始まり、結核の治療に使われました。 またストレプトマイシンの発見によって、土壌放線菌から抗生物質を分 離する手法が確立され、50年前後にクロラムフェニコール、テトラサイ クリン系のクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンなどが登場し ました。これらは小児の肺炎の治療などで大きな成果をあげました。 これに続いて、50年代にはマクロライド系抗生物質、カナマイシン、60 年代には耐性ブドウ球菌用ペニシリン、広域ペニシリン、セフェム系薬、 抗緑膿菌用アミノグリコシド系薬、80年代に入ってニューキノロン系薬、 カルバペネム系薬が開発されました。 わが国で早い時期に独自に開発された抗生物質としては、ロイコマイシ ン、カナマイシンがあげられます。また、69年に世界3番目のセフェム 系薬として、セファゾリンが開発されたことは大きな出来事でした。 セフェム系薬の発端となったのは、51年にイタリアのブロッツによって セファロスポリンC産生菌が開発されたことでした。60年に英国で化学 構造が解明され、62年に米国でセファロチン、64年に英国でセファロ リジンが開発されましたが、セファゾリンはこれらに続くもので、国内外 で高く評価され現在も幅広く臨床で使用されています。 抗菌薬による治療をはじめとする医療の進歩によって寿命が大きく延 長し、高齢者や免疫力の低下した感染しやすい状態の人たちの医療 が大きなウエートを占めるようになりました。耐性菌や弱毒菌による感 染症は、これらの患者や院内感染でとくに問題となる感染症です。 また、感染しやすい人の感染症として真菌症も大きな問題となって浮 かびあがってきました。さらに、市中感染症においても起炎菌の耐性 増加がクローズアップされています。 また、エイズ、最近のSARS(重症急性呼吸器症候群)に見られるよう に、国際化時代に伴って、新しい感染症が短期間のうちに世界中に広 がることも現代の感染症の大きな問題となっています。 (参考:NIKKEI Drug Information) 「抗菌薬の歴史」「抗菌薬の作用機序」「耐性菌と抗菌薬療法」なども 参考になさってください。 |