| 10代、20代の若者に、炎症性の腸疾患が急増しているという記事 目に留まりました。その中でも最も重いクローン病について書かれて いましたので、掲載いたします。 ………………………………………………………… クローン病は唇から肛門まで、すべての消化管に慢性的な炎症が 起こり、再発しやすく完治が難しい原因不明の難病です。 腸の壁に起こる炎症と潰瘍からさまざまな症状が出て、腹痛、下痢 発熱、食べたものが吸収できなくなり、栄養障害も出てきます。 いったん治っても、多くは普通の食事をすると、再び炎症が起こり 悪化します。 こうしたクローン病の患者は約1万7千人で、クローン病として一括 して扱われることが多い潰瘍性大腸炎の患者数は5万人と言われ ています。いずれも1965年以降に増えてきた病気です。 【食事の変化】 国立国際医療センター病院消化器科の松枝啓医長は次のように言 います。 「日本のような島国では10年や20年で遺伝的要素は変化しない でしょう。クローン病の発生は、環境因子、特に食事の欧米化が関 係していると考え、66年から85年の20年間、発生頻度と食事内 容の変化を検討しました。その結果、予想通り脂肪の総摂取量と 動物性脂肪の摂取量の増加とクローン病の発生が見事に関係し ていました。 98年の厚生省研究班の報告でも、食事とクローン病の関連性に ついて興味深いことをいっています。 クローン病患者群では、ハンバーグステーキ、ホットドッグ、フライ ドチキン、インスタント麺などのファーストフードの過剰摂取があっ た。 (発症後3年未満の15〜34歳のクローン病患者対象) 【脂肪酸】 松枝医長は、先のクローン病の発生頻度と食事内容に研究で、さ らに脂肪を構成する主な物質である脂肪酸を詳しく検討しています。 脂肪酸の種類の違いによって、体内での働きが違ってくるからです。 その結果は、クローン病の増加は、欧米食に多量に含まれるn-6 系多価不飽和脂肪酸(代表的なのはリノール酸)の摂取量の増加 と関係していました。その一方で、日本食に多く含まれるn-3系多 価不飽和脂肪酸(代表的なのはαリノレン酸、エイコサペンタエン 酸、ドコサヘキサエン酸)の摂取量は減っていました。 リノール酸はサフラワー油(紅花油)やサラダ油などの植物油に豊 富に含まれています。リノール酸は、体内でアラキドン酸に変わり、 いくつかの炎症を起こす強力な仲介物質を作り出すこがわかって います。アラキドン酸そのものは肉類に多く含まれています。 リノレン酸はリノール酸とは逆に炎症を抑えるように働きます。 αリノレン酸が豊富なのはエゴマ油(ゴマとは違ったシソ科の植物) やシソ油であり、白菜やほうれん草などの野菜にも含まれています。 エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸は魚類に多く含まれて います。 松枝医長は次のように言います。 「重要なのは、n-6系とn-3系の脂肪酸の摂取バランスなのです。 n-3系に比べ、n-6系を取りすぎるほど、クローン病の発生が増え ています。」 クローン病の治療の基本は、腸壁の炎症を抑える薬物療法と食事 法です。その食事は低脂肪食です。そして、低脂肪食でもn-6系脂 肪酸を制限し、n−3系脂肪酸を投与して腸の炎症を抑えようとい う試みが進んでいます。 n−3系の魚油の投与は、すでに慢性リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸 炎などの炎症性の疾患やアレルギー性疾患などで実施され、一定 の有効性が認められています。 松枝医長は次のように言っています。 「私たちは、魚油と比べ、悪臭がなく味もよいエゴマ油を第一選択 として使っていますが、腸壁の炎症を抑えることを確かめています。 ごく最近の米国の研究でも、魚油を使い、クローン病の再発を防 ぐことを証明しています。」 「クローン病の発生を防ぐには、総脂肪と動物性脂肪の摂取を減 らすことです。特にn-6系脂肪酸を豊富に含む植物油やそれを使 った油脂食品の摂取量を減らすことでしょうね。同時にn-3系脂肪 酸を豊富に含む魚を積極的に食べることです。」 ……………………………………… 以上ですが、「サラダ油について」 「90.植物油とアトピー性皮膚炎(1)」 「91.植物油とアトピー性皮膚炎(2)」なども参考になさっていただ きたいと思います。 (参考:PHARMAVICIONVOL.5) |