妊婦と航空機旅行

妊娠は病気ではないので、原則的には旅行を含めた生活活動に制限
はないと考えられます。機内環境は一般的には正常妊娠に対しては
危険ではないと考えられており、航空機旅行が流産の危険を増加させ
るという報告はありません。しかし、搭乗中には機内環境の特殊性ゆ
えにさまざまなストレスがかかるため、妊娠ならびに胎児への影響を
考慮する必要があります。

【機内環境と航空機旅行の特殊性】

通常、旅客機はその性能や目的地までの距離や気象状況、搭載重
量などに応じて24000〜43000フィート(約7000〜13000m)の高度を
航空します。機内は与圧装置によっても外気圧よりも高い圧力がか
けられています。しかし、機体構造の限界のため、機内の気圧は与
圧を行っても地上気圧よりも高い圧力、すなわち5000〜8000フィー
ト(約1500〜2000m)の高度にいるのと同程度までの与圧にとどまっ
ています。
健常人の場合、海面高度における気圧は760mmHg、PaO2(動脈血
酸素分圧)は98mmHg ですが、高度8000フィートにおいては気圧565
mmHg、PaO2は55mmHgであり、酸素飽和度は90%です。

また、機内の温度は調整されていますが、客室内の空気の加湿は
行っておらず湿度は著しく低くなっています。一般の旅客機における
湿度は10〜20%です。機内の空気については、今日多くの航空会
社が全便禁煙としているので、タバコの副流煙に暴露される心配は
なくなりました。機内の空気のおよそ50%は再循環していますが、最
新の航空機はHEPAフィルターを装着しており、0.3micronまでの大
きさの粒子を91〜99.7%捕捉するとされ、空気中の細菌などはその
多くが除去されます。しかし、インフルエンザや風疹などのウィルス
はその大きさから考えて、十分な除去は難しいと考えられます。


【妊婦の航空機旅行】

妊娠時期として旅行に最も適しているのは、安定期である妊娠28週
ころまでとされています。例を日本航空にとると、妊婦の搭乗制限に
関する取り扱いは次のようになっています。

航空機の搭乗に際しては、出産予定日から28日以内の妊婦は、旅
行開始日より7日以内に作成された医師の診断書を要することにな
っています。但し、国際線においては出産予定日から14日以内、国
内線においては出産予定日7日以内の搭乗の場合は産科医の同伴
が条件となります。しかし、搭乗可能な妊娠時期においても、出血、
腹痛がある場合、つわりが著しい場合、切迫流産、子宮外妊娠、習
慣流産、前置胎盤、頚管無力症、妊娠中毒症などの診断を受けてい
る場合、またヘモグロビン値が8.5g/dl 以下の貧血の場合、繰り返
す血栓性静脈炎の既往がある場合は、旅行を見合わせるように指
導するようになっています。

【航空機旅行をする妊婦へのアドバイス】

機内では、気圧の低下に伴い腸管内のガスが膨張するので炭酸ガ
ス飲料を飲むのは避けることが望ましく、また、飛行機酔いによる嘔
吐が妊娠初期には助長されやすいので注意が必要です。シートベル
トの長さが不足する場合には延長用のベルトが機内に搭載されてい
ます。エコノミークラス症状群(狭い機内に長時間座ったままのため
に発症する深部下肢静脈血栓症)の発症をさけるためにも、機内で
はできるだけ1〜2時間毎に通路を歩行し、水分を充分に摂取しま
しょう。
                         (参考:臨床と研究) 

エコノミークラス症候群」も参考になさってください。

1月の「ひとこと」

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