ポピドンヨードの細胞毒性

糖尿病の三大合併症の一つに末梢神経障害があります。これは神経細胞
が高濃度のブドウ糖にさらされた結果、変性してくることで生じます。初期
症状は足のしびれなどの感覚異常ですが、進行すると足先の感覚が鈍くな
り、多少の傷が生じても感じなくなります。そのため、その部位に血流障害
や細菌感染などが合併すると、傷は治りにくくなり、皮膚潰瘍・褥瘡に発展
しやすくなります。それを治療せずに放置していると、壊疽が起こり、足の
切断を余儀なくされることがあります。

白糖・ポピドンヨード配合剤(商品名:イソジンシュガーパスタほか)は、白
糖(スクロース)の高浸透圧による滲出液の吸収作用と、ポピドンヨードに
よる殺菌作用を併せ持つことから、1990年代前半の発売当初は「皮膚潰
瘍・褥瘡」の特効薬」として頻用されました。

しかし、近年、創傷治癒のメカニズムの解明が進み、滲出液中に分泌され
る細胞成長因子や好中球、線維芽細胞などが肉芽組織や上皮の形成に
重要な役割を果たすことがわかってきました。白糖の吸収性やポピドンヨ
ードによる細胞毒性が、反って滲出液中にある創傷治癒に必要なさまざま
な因子の働きを妨げてしまうのです。そのため、現在の皮膚潰瘍・褥瘡治
療においては、創傷治癒の各段階に応じて種々の外用剤を使い分けるべ
きだと考えられるようになりました。すなわち、創傷初期の黒色期(皮膚が
壊死に陥り黒色になった時期)から黄色期(潰瘍底に黄色壊死組織が残、
存し、」滲出液が増加してくる時期)にかけて、特に多量の滲出液や局所
感染を伴う場合、蛋白分解酵素剤や白糖・ポピドンヨード配合剤、スルフ
ァジアジン銀(商品名:ゲーベン)などを使用します。赤色期(肉芽組織が
増殖する時期)から白色期(創周辺から上皮形成が起こり始める時期)に
は、肉芽形成と上皮化促進作用のあるトレチノイントコフェリル(商品名:オ
ルセノン)、ブクラデシンナトリウム(商品名:アクトシン)、アルプロスタジル
アルファデクス(商品名:プロスタンディン)、トラフェルミン(商品名:フィブ
ラスト)などを用います。     (参考:NIKKEI Drug infoemation)

消毒薬の特徴と使用上の注意」「糖尿病性神経障害」「傷の治し方
傷治癒の常識に誤り」 などのページも参考になさってください。

8月の「ひとこと」

「こらむ」と「ひとこと」項目別