| 授乳中のお母さんが服薬を必要とする場合には、その薬剤が母乳 中に移行する可能性に十分配慮しなければなりません。乳児は肝 代謝機能や腎排泄機能が未発達な上、血清蛋白結合能も低く、母 乳に移行した薬物を摂取した場合、少ない量であってもその影響 を大きく受ける可能性があります。 授乳中に服用を避けなければならない薬物では、添付文書に「本 剤投与中には授乳を避けさせること」といった注意が記載されて います。ただ、実際には、この注意書きがあっても特に危険がな いと考えられている薬剤もありますし、逆に、添付文書に記載がな いが、必ずしも安全ではない薬剤もあります。 授乳中の場合にも処方されることが多い処方に、抗生物質や解熱 鎮痛剤があります。それらの薬剤の中ではセフェム系抗生物質の セフニジル(商品名:セフゾン)と解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン (商品名:カロナール)は、どちらも授乳婦への投与に関する注意 書きが添付文書に記載されていません。セフニジルは、これまで の研究報告から母乳への移行が少ないことが明らかになっており、 添付文書の薬物動態の欄にも「乳汁中への移行は認められてい ない」と明記されています。アセトアミノフェンは服用後に少量が母 乳中に移行しますが、治療量の服用であれば、乳児への危険は ないと考えられています。また、この2剤はどちらも小児用の製剤 が販売されており、母乳を介して乳児が少量を摂取したとしても、 比較的安全な薬剤であると考えられています。 ただ、一般に、母親が服薬をしながら授乳を続ける場合には、そ れが比較的安全と考えられる薬剤であっても、母乳中への移行を できるだけ少なくするよう配慮することが大切です。そのための工 夫として有効なのは、服薬直前に授乳を行う方法です。母乳中の 薬物量は血中濃度に相関するため、セフゾンやカロナールなどの 血中薬物濃度の半減期が比較的短い薬剤であれば、服薬直前に 授乳を行うことで乳児の薬物摂取量を最低限に抑えることができ ます。 また、これと併せて、薬物治療を始める前にあらかじめ搾乳して おき、専用パックに入れて凍結保存しておく方法も有用です。母 乳はマイナス10℃程度(家庭用の冷凍庫)でも安全に保存でき ます。服薬直後に授乳が必要になった場合などに保存しておいた 母乳を使うことができます。 (参考:NIKKEI Drug Infomation) 「妊娠・胎児と薬剤(薬剤の胎児への移行)」 「妊娠・胎児と薬剤(胎児の発育と薬剤)」なども参考になさってく ださい。 |