多毛症

女性や小児において、男性ホルモン(アンドロゲン)依存症の発毛が認
められる場合を多毛症と呼びます。「多毛」といっても毛の本数が増加
するわけではなく、軟毛(産毛)が肥大化、あるいは硬毛へと変化しま
す。多毛症は、原因不明の「特発性多毛症」と原因疾患を伴った「続発
性多毛症」に分類されます。特発性多毛症は多毛症全体の約5割を占
めており、血液中の男性ホルモンは正常ですが、皮膚のアンドロゲン
感受性が亢進しています。
一方、続発性多毛症は特発性多毛症と病態が異なり、男性ホルモンが
過剰に産生されています。続発性多毛症の原因疾患として最も頻度が
高いのは多嚢胞性卵巣症候群で、多毛症全体の約4割を占めます。多
嚢胞性卵巣症候群とは、小さな嚢胞が卵巣に多数出現する疾患で、黄
体化ホルモンの異常分泌によって卵巣間質でのアンドロゲン産生が増
加することが知られています。その結果、多毛症を含めた男性化徴候
が現れるものと考えられています。

【多毛症の治療】

多毛症の治療では、脱毛クリームなどを使った対症療法に加え、ホル
モン療法も広く行われます。具体的には、卵巣におけるアンドステロン
産生の抑制を目的に経口避妊剤が投与されるケースが多く、スピロノ
ラクトン(商品名:アルダクトンAほか)も比較的よく使用されます。
スピロノラクトンは、主に利尿剤として使用される高血圧治療薬ですが、
抗男性ホルモン作用を併せ持つことが知られており、米国では女性多
毛症の第一選択薬となっています。男性ホルモンであるテストステロン
の受容体反応を抑制します。また、卵巣や副腎におけるテストステロン
合成に関与する酵素の活性を抑制することにより、その産生を低下さ
せます。抗アンドロゲン剤としては他にフルタミド(商品名:オダイン)が
使われることがありますが、スピロノラクトンのほうが安価であり、かつ
30年以上の使用実績もあることなどから、現時点ではフルタミドの使
用は一部にとどまっています。
スピロノラクトンを降圧利尿剤として用いる場合は通常1日100〜400
mg程度が投与されますが、多毛症の治療では降圧利尿作用を最小
限に抑えるため、50mg/日程度から開始し、効果を見ながら漸増する
という方法がとられます。女性ホルモンの低下が見られる月経周期の
4〜21日目に服用する方法が一般的で、数ヶ月後から効果が認めら
れます。
海外文献をまとめた報告によると、多毛症患者に対して、同剤を50〜
200mg(50mgから開始し漸増)を投与したところ、2〜5ヶ月目に効果
が認められ、60〜80%の症例に有効だったとされています。

スピロノラクトンの副作用としては、頻尿や起立性低血圧のほか、月
経異常、乳房痛、倦怠感などが知られています。ただ、多毛症の治療
に使用する場合は低用量であることから発生頻度は低く、これらの副
作用が認められた場合でも、服用を継続している間に大半は自然消
失するといわれています。    (参考:NIKKEI Drug Information)

7月の「ひとこと」

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