| 一般にヤマイモの名で売られているのは、ヤマノイモ科ヤマノイモ属に 分類されるナガイモ(長芋)です。ナガイモは中国南西部の雲南地方が 原産地で、紀元前3世紀ごろから栽培されるようになったとされていま す。耐寒性に欠け高温多湿を好むヤマイモ属の中で、ナガイモは比較 的寒さに強く、北海道と青森に大産地があります。扁平型のイチョウイ モ、丸く団塊状のヤマトイモもナガイモの近縁種です。 一方、主に里で栽培されるサトイモ(サトイモ)との対比で、食用される ヤマノイモと呼ぶこともあります。食用のヤマイモ属には、ナガイモの他 に、山に自生するジネンジョ(自然薯)、南アジア原産のダイショ(大薯) が含まれますが、いずれも粘り気があります。中でも日本を原産地とす るジネンジョは、ナガイモとは比較にならないほど強い粘り気があり、栄 養価も高いことが知られています。 生で食べられる唯一のイモ 中国では、ヤマイモの外皮を除いて乾燥させた「山薬」を、強壮・健胃・ 整腸剤とするほか、八味丸の原料にも使用しています。中国では乾燥 品をスープに入れて食べるのが普通ですが、日本では生で「とろろ」と して食べるのが一般的です。 普通のイモ類のデンプンは、加熱しないと消化が悪く、生で食べること はできませんが、ヤマイモはデンプン分解酵素であるジアスターゼをダ イコンの3倍も含んでおり、糖質分解酵素のアミラーゼも含有するため、 そのままでも十分消化できます。むしろ加熱はこれらの消化酵素を壊し てしまうので、ヤマイモは生のまま食べたほうが消化が良いと言われて いるほどです。 また、栄養価は高いけれど消化しづらい麦飯も、とろろをかけて食べる と、これらの消化酵素が働き、すんなりと吸収できます。 なお、とろろ汁のようにすりおろしたり細かく刻んだりすると、ヤマイモの 細胞が破壊されて酵素が浸出するので、より消化が良くなります。 もちろん、このときも加熱しないほうが良いので、出し汁を使うときは40 〜50℃程度に冷ましてから使用すると良いです。 ヌルヌル成分 ヤマイモには「山うなぎ」という別名がありますが、これはヤマイモとウナ ギがともにヌルヌルしていて、食べると「精がつく」という共通点によるも のです。 このぬめりの正体であるムチンは、蛋白分解酵素や粘膜修復作用があ るため、たんぱく質の消化・吸収が促進され、エネルギーとして利用され やすくなっています。豊富な消化酵素とともに、胃腸が弱く疲れやすい人 にはうってつけの食材です。 また、最近では粘液成分の一つであるデオスコランに血糖値を下げる 働きがあることがわかってきました。デオスコランは、消化管内でブドウ 糖を吸着し、体外に排出するとともに、腸管での糖の消化吸収を抑制す るため、食後血糖値の急激な上昇が起こりにくく、膵臓の負担が軽減さ れます。 そのほかヤマイモは、食物繊維やカリウム、ビタミンB1、ビタミンCも豊 富です。食物繊維は便秘の解消だけではなく、腸管でのコレステロール 再吸収を阻害します。また、カリウムは、ナトリウムの排泄を促進し、降 圧作用を示します。カリウムの目標摂取量は1日3500mgで、ヤマイモ は100g中に500mgを含んでいます。 ヤマイモは直接触れると手や口がかゆみくなるのは、皮付近に存在す る針状結晶のシュウ酸カルシウムが皮膚に刺さるからです。この結晶 は弱いので、酢やレモン汁つけると溶解し、痒みが治まります。 (NIKKEI Drug Information) |